「今年の剣菱」を「いつもの剣菱」へ。
変わらぬ味を守る“知識の門番”
「ブレンダー」というと洋酒のイメージが強いが、剣菱の味を守るうえでも、その存在は欠かせない。
剣菱では、3つの蔵でそれぞれ異なる蔵人(くらびと)たちが造り上げた酒を、最低ひと夏は熟成貯蔵。旨みが円熟味とともにいっそう輝きを増す秋を迎えて、はじめて出荷となる。もちろん、蔵人たちは酒造りの“エキスパート”。造られる蔵や造る蔵人が違っても、夏の間熟成貯蔵させても、各蔵ごとの味にそれほどの差はないが、それらをブレンドすることで「その年の剣菱」を「いつもの剣菱」へと昇華させるのが、ブレンダーの仕事である。
ブレンドの対象となるのは、その年に各蔵ででき上がった剣菱だけではない。それらをベースに、百数十本ものタンク内で熟成されている百数十種類の剣菱のなかから必要な味を見極めてブレンドすることで、「いつもの剣菱」の味を造り上げていく。
ゆえにブレンダーは、タンクのなかで眠るすべての剣菱の味の違いはもちろん、それらをブレンドしたときに味がどう変化するかまでを熟知していることが絶対条件。酒は「旨いものと旨いものをブレンドすればより旨くなる」というほど単純なものではない。旨い酒と旨い酒をブレンドした結果、個性を消し合って物足りない味になることもあれば、逆に物足りない味と物足りない味をブレンドした結果、隠れた個性がふわっと浮かび上がって驚くほど旨い酒になることもある。そんな無数のブレンドのパターンを、実際に何度も何度も口に含むことで頭に叩き込んでいく。
ブレンダーは、剣菱を口に含めば、「いつもの剣菱の味となにが違うか」よりも先に「どのタンクとどのタンクの剣菱をどのぐらいブレンドすればいつもの剣菱の味になるか」といったイメージが漠然と湧く。そんなブレンダーが、実際にさまざまなブレンドを試しながら厳選。それを、剣菱の味を知りつくした役員や従業員たちが試飲し、場合によっては再度調整を加え、はじめて「その年の剣菱」が「いつもの剣菱」になる。
だからこそ、自信を持って言える。剣菱の味は、変わらない。